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2009年09月17日

小説 神は見ている〜エピローグ

エピローグ
 我らが絶対神カエサル……その存在は伝説上のもので、本当は居ないのではないかと思っていました。
 神は必ず救いの手を差し伸べてくださると、私の母はいつも言っていたけれど、そんなこと嘘だと思っていました。
 ご両親を亡くされ、最愛の人、カナタ様も亡くされ、孤独と魔物と闘い続け、身も心も傷だらけのイリア様を見ていて、私はそう思っていました。でも、そうではなかった。
 あの日、イリア様とキリエ様が二人で魔物を倒した時を境に、この国を覆う空気がとても綺麗になった気がしました。いつもと変わらない毎日ですが、空気がとてもすがすがしく気持ち良いのです。
 街ゆく人々も今までに増して笑顔で、街には活気が溢れています。
 もう魔物に怯える必要はない、という安心感とこの国の二人の英雄に感謝の気持ちでいっぱいです。
 神は、イリア様を、そしてこの国を見捨てたわけではなかったのですね。
 どうしたらイリア様を苦しみの呪縛から解放することが出来るのか、解決方法を見つけるのに、ちょっと時間がかかっただけなのかもしれない。あるいは、ちょっと眠っていて気づくのが遅かっただけなのかもしれない。
 今のイリア様はカナタ様が居た頃の笑顔を取り戻され、怪我されることも少なくなり、毎日きらきらと輝いていらっしゃいます。
 神はこれからもずっと、イリア様とこの国を見守っていてくださるでしょう。
 イリア様とキリエ様がいつまでも仲良く、平和に暮らせる日々が続きますように、シオンのこのお願いを、どうかお聞き届けください。
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2009年09月14日

小説 神は見ている〜6


 「かの人」は、荒れた箱庭を救おうとしている人物を見つけ、手伝い、箱庭を修復しろと、おっしゃった。
 この箱庭が何故、どのように荒れているのかは教えて下さらなかった。
 「かの人」でさえも、それはわからなかったのかもしれない。
 魔物の誕生が、「かの人」が築き上げた、自然の摂理の一部だとして、しかし、「かの人」の意思に反して箱庭を壊す可能性を持つ存在を創造するはずがない。
 「かの人」はそれはそれは、箱庭を大切にしていたから。
 それに、壊すつもりならば、どうして修復しろと私に命ずるだろうか。
 だとしたら、やはり何者かの力が関与したことによって、魔物という存在は自然の摂理からはずれてしまった。
 そう考えるのが妥当だろう。
 自然の摂理からはずれてしまった魔物を、たった一人で救おうとしているのは、彼女。
 いくら、彼女が力ある人だとしても、魔物を本当に救うならば、元を断たなければ、不可能な話。
 原因は一体何なのか……。
 「かの人」が創造した箱庭の中に、そんな事が出来るほど、巨大な力を持つ何かはいるのだろうか……。
 否。
 「かの人」に匹敵する力を持つほどでなければ、こんなことできるはずがない。
 「かの人」、箱庭を創造した神カエサル様に匹敵する力を持つ者。
 悪の化身ヴェルサ。遥か昔より、カエサル様と敵対してきた存在。
 もし、本当にヴェルサが関わっているとしたら、我らに勝ち目はあるのだろうか。

「キリエ、キリエったら、返事してよ。どっかに行っちゃったの?」
 薄暗い森の中。
 月明かりを浴びながらいつもの温泉につかるイリア。
 彼女は、岩を背にし、その向こうにいるキリエに話し掛ける。
「……。ごめん、ちょっとぼーっとしてた。」
 キリエの慌てた声が聞こえ、イリアはほっと一息をつく。
「どうしたの?考え事?」
「いや、別に。大したことじゃない。」
「そう。ならいいんだけど……。」
 ちゃぷん。
 イリアが湯の中を動く音がする。
「あのね、私聞いて欲しいことがあるんだけど。」
 突然、岩の淵から彼女が身を乗り出してキリエを見る。
 彼は、彼女の顔だけじゃなく、白い肌さえも見えそうにな事態に慌てふためき、彼女にぱっとタオルをかぶせた。
「わっ。何よー。私の裸に興味ないの?」
 イリアはタオルを抱え、再び岩陰に身を隠す。
「馬鹿。聞いて欲しい話はそんなことか?」
「違うよ。私ね、いい加減、このいたちごっこみたいな戦いを終わらせようと思うの。」
 いたちごっこみたいな戦い?
「今私達を襲ってくる魔物の姿は本来のものじゃない。誰かに力を与えられ、この世への未練を原動力に、人間を襲って世界を壊すように仕向けられて、いいように弄ばれているかわいそうな魂。そんな酷いことする奴をやっつけて、魔物との戦いを終わりにする。」
 タキと同じことをイリアも考えていた。
 元凶を倒すということはヴェルサと戦うということ。
 どうやって戦う?彼女を守りきれるのか?
「いきなり、何を言い出すんだよ。そんなことできるわけないだろう。そんなことする奴が何処に居るのか、本当にいるのかさえわかんないじゃないか。大体、そんなことできる奴に太刀打ちできるわけがない。」
「恐い?」
 いつの間にか服を身につけたイリアが、キリエの顔を覗き込んでいた。
「そんなにびっくりした顔しないでよ。それとも、裸じゃなくてがっかりした?」
「馬鹿にしてるのか?お前は!」
「本気だよ。キリエだって、他の色んな国を見てきたなら気づいているでしょ。この国だけ魔物がたくさん居て、強くて、皆人間を襲う。 私は、この前隣国との会談で、他国の魔物の様子を聞いてみて確信したよ。この国の何処かに居る。そして、私を狙ってる。 魔物を浄化できる私の力が恐いのか、それともこの力が欲しいのか……理由はよくわからないけれど、でも、私を狙ってる。だから、きっとあいつは出てくるよ。私が呼べば、必ず。どんなに強くたって絶対やっつけてやる。」
「イリア……。」
 彼女は手を握り締め、月を見つめていた。
「別にね、この戦いに無理に付き合えと、言ってるんじゃないの。ただ、もしこの戦いで私がこの世から姿を消したら……、その時はこの国とこの国の人達のことをよろしくね。」
「俺は、お前の護衛をするのが仕事。そんなことを言われても、俺の仕事の管轄外だ。その代わり、お前が行くなら地獄の果てまでだってついてってやるよ。」
「恩着せがましい言い方するわね。地獄とか、天国とか、そんなとこまでついてこなくっていいから。ちゃんと護衛してくれるんでしょうね?私の身代わりになんてならないでよね。ついてくるんだったら、まず自分の身をちゃんと護ってよね。私、他人の面倒まで見れる余裕はないんだからね。」
「俺を誰だと思ってるんだ?今まで一度だって、お前に護られるようなハメになったことあるか?余計な心配するな。」
「そう。じゃあ、行くわよ。」
「何処へ?」
「悪い奴をやっつけに。」
 今からか?
posted by houmonkangoshimama at 07:55| Comment(0) | 小説 タイトル「神は見ている」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月09日

小説 神は見ている〜5


 城の敷地内にある、稽古場で、キリエとタキが対峙していた。
 お互い木刀を持って、勿論剣の稽古だ。
 タキはキリエが思っていたより強かった
 これで、本当にイリアに勝つことができないのだろうか。
 キリエとタキは一呼吸おき、木刀を収めた。
「タキ、強いじゃないか。それで本当にイリア様に勝てないのか?イリア様よりずっと強いと思うんだが。」
「イリア様の気迫には決して勝てません。追い込まれた時、実力以上の力を発揮なさいます。だから、この城の兵は誰も。イリア様には勝てないのです。キリエ殿は、本当にお強い。窮地に追い込まれたイリア様の力を優に上回っていらっしゃる。感服致します。」
「そんなことないさ。俺にだって限界はある。」
 無限な強さを持っているのは、全てを創造した「かの人」だけ。
「この間、イリア様から話を聞いたのだが、カナタという人は強かったのか?」
「はい。カナタ殿も強かった……。ですが、キリエ殿の方がずっと強いでしょう。何しろ、カナタ殿が亡くなったのはもう四年も前のことですから。」
 そうか。歯が立たないほどの強い魔物か……。
 キリエはイリアの話を思い出していた。
 カナタという人が刺し違えてしとめた魔物。
「あの頃はまだ、魔物は今ほど強くありませんでした。突然強い魔物が出現したという驚きと、イリア様がまだ幼く力も弱かったことと……。イリア様はその事でご自分を責めていらっしゃるようですが、……運が悪かったのだと思います。」
 タキは冷静にそう言った。
 衛兵という職。いつでも死がつきまとう。
 それなりの覚悟が必要なのだ。
 イリアを護ってその職をまっとうできたのだから、決して不幸な死ではなかったのではないか。愛する人を守りきることが出来たのなら、尚更……。
「ふうん。」
 二人は稽古場の真ん中で汗を拭きながら、座って話しを続けていた。
「少し気になっていたことがあるんだがな、タキ、聞いてもいいか?」
「私で解ることならお答えしますが。」
「俺はここに来る前に色々な国を見てきた。深い森や砂漠も通ってきた。勿論、魔物に出会う事だって多々あった。しかし、この国で出会った魔物より力は持っていなかったし、手出しをしなければ襲ってこない魔物さえも居た。どうしてこの国の魔物は、これほど力を持ち、人間を襲ってくるんだ?」
「確かに以前は……、カナタ殿が亡くなる前までは、魔物達の力はそれ程強くもなく、襲ってくることもあまりありませんでした。何故突然魔物達が強くなり、人間を襲うようになったのかは、わかりません。……キリエ殿は魔物がどのように誕生するか、ご存知ですか?」
「いや。」
「魔物の魂は、死んだ人間や動物達の魂……。この世に未練があり、昇天できなかった者達の魂が、世界を彷徨い続けた挙句の果てに、既に魂のない肉体、もしくは魂が抜けかかっている肉体に宿り、その魂は新たに得た肉体と融合するため、苦しみ葛藤し、異形の姿に変化する、それが魔物。勿論これは、この地に伝わる伝説に過ぎませんが……。イリア様はよくおっしゃいます。苦しんでいるのは人間だけじゃない。魔物達も苦しいのです、と。」
「タキはその伝説を信じているのか?」
「はい。信じています。このようにして魔物が生まれるからこそ、イリア様の浄化の力が有効なのだと思っています。」
 タキは、一呼吸おき、更に言葉を続けた。
「ここから先は私の個人的な意見にすぎないのですが……。」
「ああ。なんだ?」
「魔物達も、異形の姿をしているとはいえ、自然の産物、我らの神カエサルが創造したもの。それがここ数年で突如として力を増し、人間を脅かす存在となりました。我々ただの力ない人間では、魔物を殺すことはできても、その魂までを天にかえすことは出来ない。天にかえることの出来ない魂は再び別の肉体に宿りその存在は魔物となって我々を脅かすでしょう。イリア様がいらっしゃらなければ、魔物はいずれ、世界に溢れかえり、人間はおろか、動植物達も消滅し、荒野となる……。しかし我らの神カエサルがそんなこと望むはずがない。何者かが、何らかの力を使って魔物を強くしているのではないでしょうか。この世界を手中に収めるために。そのためには、唯一魔物を昇天させることができるイリア様が邪魔なのです。だから、この国には、いえ、イリア様の周辺には強い魔物が出現する……。」
 そこまで話すと、タキは立ち上がった。
「あくまでもこれは想像にすぎません。仮にこの想像が当たっていたとしても、犯人を見つける手立てはないのです。キリエ殿、稽古をつけて下さり、ありがとうございました。またよろしくお願いします。」
 そしてタキはキリエをおいて、稽古場を後にした。
posted by houmonkangoshimama at 07:47| Comment(0) | 小説 タイトル「神は見ている」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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